小商い、チリツモ。

積もるかは分からない。とりあえずチリを積む日々。

『スモールビジネスの教科書』が刺さりすぎて、何度も読むのを中断した話

通勤中のKindle音声読み上げで『スモールビジネスの教科書』を読み終えました。派手な成長戦略や「革新的なビジネスモデル」を語る本ではなく、むしろ真逆で、「地味で泥臭い商売」をどう安定的に成立させるかを書いている本でした。

一人で事業をやってきた身としては、耳が痛い箇所も多く、何度も一時停止して気持ちを整えたりしていました。ハイライトした中から、特に印象に残った3つのテーマに関して感じたことを書いていきます。

テーマ①:課題・ニーズに関すること

顧客のニーズについては、本書の中でも特に「そうそう、これだ」と膝を打った一節がありました。

注意点としては、顧客自身がニーズとして語ることと、ニーズを満たしたら金を払うことには大きなギャップがあることである。

これは、以前自分のブログでも書いたことのある内容でした。先に本書を読んでおけば、もっと早くこの構造を言語化できていたかもしれません。ただ一方で、先に自分の実体験があったからこそ、この一文が「知識」としてではなく「答え合わせ」として響いたのだとも思います。実際に痛い目を見た経験がないまま同じ一文を読んでいたら、ここまで刺さらなかった気がします。

もう一つ、読んでいて思わず身がすくんだのが次の指摘です。

ビジネス全般に共通であるが、「褒められたい」という、ビジネス自体に不要な欲求を経営者自身が排除することにより、成功率を高めることが出来る。

褒められたいと思って始めた訳ではありません。ただ、障害者支援に取り組んでいると、「意義のあることに取り組んでいますね」と言っていただく機会が実際にあります。そのとき、自分の中でどこか気持ちよくなっている部分があったことに、この一文を読んで自覚させられました。

「褒められて気持ちよくなる」となった瞬間、判断の軸がぶれる。だから駄目だったのか、と腑に落ちると同時に、これは今後も繰り返し自分に言い聞かせておくべきことだと感じました。

テーマ②:差別化しない、という戦略

世の中のビジネス本の多くが「差別化」を強調する中、

普通に求められているものを普通に提供する。差別化はあとからかけるふりかけのように飾りでよい。

事業領域内の成功要因をコピーし、その会社のミニバージョンを作りなさい!

さらに、

儲かっているプレイヤーが捨てたゴミを拾いなさい!

と書かれています。

私には、この本で書かれているスモールビジネスを体現しているような友人がいます。その友人は、自社のサービスのことを「ゴミみたいなもの」と言っていました。徹底的にコピーする相手を探しており、コピーを探すためのスタッフも抱えています。

そういう流派もあるが、自分なら同じことはしない。そう思って今日まで過ごしてきましたが、本書を読み進めていくうちに、この流派が成立する条件も同時に書かれていて、そこに納得感がありました。

誰かが「本当に必要な機能しかありませんが価格は他社の5分の1ですよ」と言ってやるべき

つまり「コピーそのもの」が価値なのではなく、必要十分な機能を安くシンプルに届ける、という部分に工夫の余地がある、ということなのだと理解しました。
そして、独自性を証明しようというエゴよりも、「すでに売れている」という事実に着目すべきとも思いました。

業界の頂点を目指す必要はなく、「他の人が嫌がるが自分は苦にならない」というポジションを取りにいけばいい、というメッセージは、身近な友人を見てきた実感とも重なりました。

テーマ③:現場での実践

最後は、より具体的な「現場でどう動くか」の話です。最初の顧客獲得の泥臭さについても率直に書かれています。

最初は無理やりにでもよいので顧客に実験に協力してもらう。

スモールビジネスの初期段階において、本気で競合に叩かれたら優位性を保てないし保つ必要もない。競合優位性は段階的に作ればよいのだ。

最初から完璧な差別化や優位性を持つ必要はなく、まず小さく実験に付き合ってもらい、そこから顧客獲得のチャネルを固め、段階的に階段を登るように事業を育てていく。この順番の考え方は、一人で事業を回している立場からすると、むしろ肩の力が抜ける整理でした。

おわりに

ビジネスは、まず目の前の1人を喜ばせる「スモール」なところに全ての始まりがある。そして、ビジネスとは本来、不確実で、泥臭く、地味で、汚いものなのだ。それこそがビジネスの王道なのである。

理念やビジョンから逆算するのではなく、目の前の一人のニーズに向き合い、すでに儲かっている場所の手薄なところを丁寧に拾い、顧客を選びながら段階的に信頼とチャネルを積み上げていく。派手さはないですが、改めて考えてみれば自分らしい気がしますし、背中を押されて気がしました。